「社会学とは」…フランクフルトに来た理由

ゲーテの家を訪ねて、ドイツ・フランクフルトの二日目。
この街にやってきたのは、理由があった。
社会学で有名な、「フランクフルト学派」の研究所を 一目見てみたいと思ったのだ。
社会学とは単純に言えば、
社会の仕組みを いろんな角度から分析してみることだ。
たとえば、どうして人は自殺してしまうのか。孤独だと感じるのはなぜか。
グループや組織の中で感じる 「合わせる空気」とはなんなのか。
人はひとりだけでは社会にならない。
だから、人と人が出会って関係をつくるとき 何が起こっているのか(家庭、学校、職場、地域、国家)を
より深く見てみるのに 時間をかけてみること。これが社会学の視点だ。
ぼくは 大学に入ってから 社会学にはまっていた。
手を出した理由は、高校を中退してたくさん疑問があったからだと思う。
「どうして 学校以外の場所が ないんだろう?」
「(とくに都会で) 同じ国の人同士なのに なんでお互いよそよそしいんだろう」
「(学校行かないで)ひとりで生き続けてきた人間が うまくグループと関われるんだろうか」
そんな疑問に対しての考え方を与えてくれた存在。それがフランクフルト学派で、
歴史的にも有名なその研究所が この街にあったのだ。
フランクフルト学派とは
簡単にいってしまうと、
「人間が 人間らしくなくなってしまうのは どうしてか」を命題に
疎外を唱えたマルクスや 精神分析のフロイトなどの研究を合わせて、追究してきた人たちの集いだ。

人間らしくなくなるとは どういうことか。
いろんなイメージができる。
満員電車で、ぎゅうぎゅうに詰め込まれる。
日々の仕事に、いらいらして当たってしまう。
もっとひどくなれば、
「お前なんか生まれてこなければよかった」と、家庭内で振るわれる暴力。
学校のクラスでいじめられ 居場所を失って 自殺してしまう小中学生。
娘/息子の夫婦から疎まれてしまい 誰もいない家で孤独死をむかえる 老人。
充実した生のなさ。人と人のつながりが感じられず、自暴自棄になってしまう。
だからこそ、「国のため」「私たちは純粋な人種なんだ」という「わかりやすい物語」にとりつかれ、
その一員であることに 他の人と同じであることに 喜びを見出し、熱狂的になれるきっかけを得る。
「あれこれと自分で考えて行動しよう」という“めんどうな” 自由を放棄してしまう。
だから、フラントフルト学派の研究は ナチズムの解明にもなった。
機械化、官僚化、消費中心の生き方を危惧し、「人の生とは」を問い続けて。
社会研究所を訪れて。


研究所の設立は1923年。
もともと、マルクス主義の研究をする機関として つくられたという。
想定していたよりも、けっこう小さめで わりと普通の 大学にある事務所みたいな感じだった。
ふつうに、観光名所でもなんでもなかったから オープンにしてるわけでもない。
それで、ドアの前にしばらく立って 中を伺っていたら
オフィスの人が来てくれて、開けてくれた。
「大学で社会学を専攻にしている、
その中でも著名な フランクフルト学派が集っていたという 拠点を見てみたいと思って、旅しにきた…」
そんな風に話をしたら、通してくれた! 簡単にだけだが、見学ができる。

一室に入ると、一群の書棚がずらり。
会議が行われるような形状で 机も並ばれていた。
正直なところ、一見すればふつうに 華やかでもなんでもないところだ。
でも、個人的に・・・
「愛するということ」や「自由からの逃走」を読んでから 入り込んだエーリッヒ・フロムや、
市民的公共圏の追究をし続けた ハーバーマス が ここに出入りしてたのか、と感じながら
その空間にいられたことに、なんとなく不思議な感覚を覚えた。
あの本の著者が、ここに立って、歩いて、話していた。(それに後者は今も生きている)
自分も今、この場にいる。
同一の世界を生きてるんだな、と実感を得たとき
彼らに追いつけるよう 自分もより学問に熱中したい。
そう励まされるような気がした。
フランクフルト学派 -ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ (中公新書)
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